Enteropathogenic Escherichia coli (EPEC) は食品を媒介とする病原体で、小児の腸疾患の原因となる。 EPEC感染症は、特に重症で長期にわたる感染症患者や栄養障害者において、宿主の栄養不良と関連していることが多い。 EPEC感染が腸管上皮細胞における栄養トランスポーターの機能や発現に影響を与える一方で、アスコルビン酸(AA)の腸管吸収に及ぼす影響についてはこれまで不明であった。 そこで、ヒト腸管上皮Caco-2細胞(in vitro)およびマウス(in vivo)モデルを用いて、この問題について検討した。 Caco-2細胞にEPEC(WT)を感染させると、AAの取り込みが著しく阻害された。 EPECの変異体(ΔescN、ΔespA、ΔespBおよびΔespD)はAAの取り込みに影響を及ぼさなかったが、ΔespFおよびΔespG/G2変異体はCaco-2細胞におけるAAの取り込みを顕著に阻害した。 さらに、感染によりhSVCT1およびhSVCT2タンパク質とmRNAレベルの両方が有意に発現低下することが観察された。 同様に、EPEC(WT)をマウスに感染させると、空腸と大腸において、AAの取り込みが有意に阻害され、mSVCT1およびmSVCT2タンパク質とmRNAレベルの両方の発現も減少した。 腸管における細菌感染に対する応答にはエピジェネティック機構(microRNA)が介在していることが研究により明らかにされている。 そこで、最近SVCT1およびSVCT2を制御することが示されたmiR103a、miR141およびmiR200aの発現レベルを測定した。 in vitroおよびin vivoモデルのデータから、3つのmicroRNAはいずれもEPEC感染時に有意に発現が上昇することが示された。 また、SVCT1の機能を制御するアクセサリータンパク質human glyoxalate reductase/hydroxypyruvate reductase(hGRHPR)の発現も両モデルともEPECにより顕著に低下した。 以上のことから、腸管上皮細胞において、EPEC感染はSVCT1およびSVCT2の両方の発現異常を介し、AAの取り込みを顕著に阻害することが示唆された。