Solute propertiesEdit
他の条件が同じであれば、容易にヒドロンを供与する化合物(ブレンステッド酸、下記参照)は一般に極性、親水性の溶質で、静誘電率が高い溶媒によく溶ける。 例えば、酢酸(CH3COOH)やメタンスルホン酸(CH3SO3H)のような有機酸が挙げられる。 しかし、分子の非極性部分が大きいと、これらの性質が減衰することがある。
非水素化水素 (完全に自由な、または「裸の」水素原子核) は凝縮相 (液体または固体) には存在しない。 超酸は「自由電子」の存在によって並外れた水素供与力を発揮すると言われることがあるが、このような表現は非常に誤解を招く。超酸フルオロアンチモン酸(HF:SbF5)に存在する超酸カチオンの1つ、H
2F+
などの「自由電子」源に対しても、自由電子の脱離には数百 kcal/mol のオーダーで膨大なエネルギー的ペナルティがかかるのである。 このため、遊離ヒドロンが溶液中に存在する可能性は、たとえ束の間の中間体であっても、事実上排除される。 このため、液体の強酸では、ヒドロンはグロッタス機構と呼ばれる水素結合のネットワークに沿って、1つの分子から次の分子へと順次移動して拡散していくと考えられている。
AcidityEdit
ヒドロンイオンはルイス塩基からアダクションにより電子対を分子に取り込むことができる:
+
+ :L →
このルイス塩基(L)の捕獲により、ヒドロンはルイス酸性の性質を持つことになった。 Hard/Soft Acid Base (HSAB)理論でいえば、素のヒドロンは限りなくハードなルイス酸である。
ヒドロンはブレンステッド-ローリー酸塩基理論の中心的な役割を果たす。 以下に示す一般的な酸塩基反応では、HAが酸であり、B(ローンペアで表示)は塩基である。
HA + :B → +
+ :A-
水素カチオンの水和物であるヒドロニウム(ヒドロキソニウム)イオンH
3O+
(aq)はアレニウスによる酸の定義で重要な対象になっている。 このほか、プロトンと2個の水分子からなるツンデルカチオンH
5O+
2、ヒドロニウムイオンと3個の水分子からなるアイゲンカチオンH
9O+
4は、グロトゥース機構により水溶液中のプロトン拡散に大きな役割を果たすと理論的に考えられている。 入門書などでは、水溶液中にヒドロンは決して溶存しないことを強調するためにH
3O+
(aq)と表記されることが多いが、これは水中の溶存プロトンの複雑な化学構造を単純化しすぎていて、誤解を招くことがあるので、H+
(aq)という表記が好まれ、水溶性の表現であると同時に水分子の数に関して統一的でないため、よく使われている。