シグナル分子としての無機リン酸:骨肉腫治療の潜在的戦略

無機リン酸(Pi)は生物にとって必須の栄養素である. 無機リン酸は、骨芽細胞の分化や骨格のミネラル化など、様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を担っている。 その状態から逸脱すると、いくつかの急性および慢性疾患状態につながり、加齢プロセスや寿命に影響を与えるため、適切なPiホメオスタシスの維持は重要なイベントである。 血清中のPi濃度は、腸管からの吸収、細胞内および骨内貯蔵プールとの交換、腎尿細管再吸収の間の複雑な相互作用によって狭い範囲に維持され、主にNa/Pi共輸送体の活性に依存する。 Piは食事に豊富に含まれ、腸管での吸収は効率的であり、調節は最小限である。 腎臓はPiのホメオスタシスの主要な調節因子であり、Piの必要性に応じてPi再吸収能力を増減させることができます。 さらに、Piは、多くの種類の細胞において、シグナル伝達経路、遺伝子発現、タンパク質量を変化させることにより、様々な細胞機能を調節することができる重要なシグナル伝達分子として浮上している。 しかし、血清中あるいは局所的なPi濃度の変化の検出とそれに続く下流調節カスケードに関する最初の事象についてはほとんど知られていない。 以前、我々は、Piがヒト骨肉腫U2OS細胞の増殖と攻撃性を阻害する証拠を提供し、その発現と機能がPiに関連して影響を受けるタンパク質としてアデニル酸シクラーゼ、β3インテグリン、Rap1、ERK1/2を同定した。 さらに最近、我々は、Piがドキソルビシンに対する骨肉腫細胞の感作をp53依存的に、またERK1/2のダウンレギュレーションを含むメカニズムで誘導することが可能であることを示した。 本総説では、骨および哺乳類の他の細胞種における新規の特異的シグナル伝達分子としての無機リン酸塩に関する現在の知見をまとめ、局所的な部位におけるPiレベルを標的とすることが、骨肉腫治療の改善のための潜在的戦略である可能性について考察する。

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